「人に見られる環境だと仕事が捗る」は本当?

オフィスで仕事をしているとき、周りの目が気になり、集中力が増すような感覚を持ったことはないだろうか。



私自身もちろんオフィスも含め、カフェやコワーキングスペースなどの他人に見られている環境で意外と仕事が捗ったなと思うことが多い。




逆に、誰もいない静かな部屋ではついついダラダラしてしまって仕事が進まないと感じることも多々ある。



このように「人に見られている」と感じることでなぜか仕事が進むという現象は、多くの人が経験したことがあるのではないか。


私もこんなことがあった

私も以前、リモートワークが増えて自宅での仕事がメインになったとき、最初は「静かで誰にも邪魔されない、自分だけの空間で仕事ができる」と期待していた。



しかし逆に、集中力が続かずついつい他のことに気を取られてしまうことも多くあった。




一方で、仕事仲間と一緒にオンラインで作業したり、たまにオフィスに出社したりカフェで仕事をしたりする際には、驚くほど仕事が捗る。



どういう条件下で仕事が捗って、仕事が捗らないのか。


調べる中で面白い実験の情報もあったのでそれを交えてここに書いてみる。


「社会的促進」という名前がついていた

この「人に見られるから仕事が捗る」現象には心理学的な背景がある。


つまりそういうことが起こるものなのだ、と すでにたくさんの研究者が実験を重ねて情報を残してくれている。



心理学の分野では「社会的促進」という概念が知られており、これは他者が自分の行動を見ているという意識が働くとパフォーマンスが向上する現象を指す。




特に、簡単で慣れている作業の場合、この効果は顕著のようだ。



人は本来社会的な存在であり、他人からの評価や反応に敏感だ。



そのため、人に見られることで無意識のうちに「良いパフォーマンスを見せよう」と意識するようになり、その結果集中力が増すのだ。



また「監視効果」とも呼ばれるこの現象は、周囲の人が自分の仕事ぶりを見ていると感じることで自分の行動に対してより責任感が芽生え、結果として仕事が捗るということが言える。



逆に、誰も見ていない状況ではこの意識が薄れるため、集中力が低下することが多くなる。




この社会的抑制や監視効果に関するめちゃくちゃ面白い先駆けの実験がある。



1960年代、ロバート・ザイアンス(Robert Zajonc)は他者の存在が動物のパフォーマンスにどのような影響を与えるかを調べた。



そこで実験に使ったのは「ゴキブリ」とのこと(※苦手な人ごめんなさい)

実験では、ゴキブリを用いて、他者の存在が単純な課題難しい課題の遂行にそれぞれどのように影響を与えるかを観察した。



単純な課題

直線状のトンネルを通って出口に到達するという比較的単純な課題に挑戦。



この場合、他のゴキブリが観客として存在していると、ゴキブリはより速くトンネルを通過した。



これが「社会的促進」と呼ばれる現象で、簡単で慣れている作業を行うときには、他者の存在がパフォーマンスを向上させることが確認された。



この実験の他にも、他者が見ていることでパフォーマンスが向上した、という例は多々あり、ゴキブリのような動物でも、人間でも同様の効果があるというのがわかっている。




では、難しい課題の場合はどうだったか?






難しい課題

ゴキブリが複雑な迷路を通って出口に到達するという、より難しい課題が与えられた場合、観客として他のゴキブリが存在すると、迷路を通過する速度が遅くなった




これは「社会的抑制」と呼ばれる現象で、難しい作業を行う際には、他者の存在がプレッシャーとなり、パフォーマンスが低下することを示した。



人に見られる環境でのパフォーマンスといろんな条件について

これらから言えることは、自分が行っている作業が得意なものであったり、すでに慣れている場合には「仕事が捗る」といった効果が出やすいということだ。



例えば、ルーティンワークや反復的な作業などは、他者の目があることで効率が上がると言える。




一方で、初めて挑戦するような複雑な作業や、ストレスのかかるタスクの場合、他人の目が逆にプレッシャーとなり、パフォーマンスが低下することもある。



得意でない作業を人前で行うことがストレスになり、逆に集中力を削ぐ原因となる。



得意でない作業・複雑な作業は、もしかしたら人から見られないような環境、例えば自分の部屋やコワーキングスペースの個室などを選ぶと良いのかもしれない。



つまり適度な「見られ方」が重要であり、他者の目を意識しつつもリラックスできる環境を整えることが、最適なパフォーマンスを発揮するための鍵となると言えそうだ。


まとめ

全ての状況で同じ効果が現れるわけではないと思うが、社会的促進・社会的抑制という作用をうまく活用できる場面は多そうだ。



自分にとって最適な働き方を見つけるために、さまざまな環境でのパフォーマンスを試し、どのような条件下で最も効率よく仕事ができるのかというのは度々考えてみても面白いかもしれない。

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